ミュージカル『刀剣乱舞』とは?
ミュージカル『刀剣乱舞』とはPCプラウザ・アプリゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を原作としたメディアミックス作品のうちの一つです。
通称刀ミュ、本公演は2部制となっており1部は刀剣男士が各時代に「出陣」し時間遡行軍と戦い歴史を守る活躍を描いたお芝居(ミュージカル)、2部は『現代の戦い』と呼ばれ、アイドルさながらな衣装に身を包んだ刀剣男士達が舞い踊り歌うライブパートがあります。
今回はミュージカル『刀剣乱舞』本公演作品の一つ「静かの海のパライソ」について語っていこうと思います。
「静かの海のパライソ」とは2020年3月~5月に東京、兵庫、熊本、宮城、東京凱旋公演の予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年3月21日(土)~3月26日(木)の7公演のみ上演され、以降の公演は中止となりました。
その後「静かの海のパライソ~2021~」として2021年9月~11月に再演。東京、福岡、大阪、東京凱旋、宮城公演が行われました。
※本記事は「静かの海のパライソ本編」のネタバレが含まれます。
合言葉は「パライソ」
島原の乱と言えば、歴史に詳しくない方でも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?
島原の乱とは、島原・天草で起こった江戸幕府のキリシタン弾圧に対するキリシタン達の反乱、幕末以前に起こった最後の本格的な内戦と言われています。
物語はそんな弾圧される民衆の歌から始まり、平穏な日常は一転血にまみれていきます。
一方本丸では、審神者に呼び出された鶴丸が出陣先を知らされ、編成を任せてほしいと申し出て今回出陣する男士として松井江、豊前江、浦島虎徹、日向政宗、大倶利伽羅が選ばれます。
弾圧に苦しむ民衆たちは天草四郎を中心として団結し幕府に立ち向かいますが、刀剣男士達が出陣した先では時間遡行軍に囲まれた天草四郎と、一揆の首謀者の一人である山田右衛門作の姿が。
刀剣男士達は時間遡行軍を倒しますが、あと一歩間に合わず天草四郎は帰らぬ人となりました。
歴史は既に変わってしまい任務は失敗か。と思われた時に突然、鶴丸が天草四郎を演じると名乗りを上げ、その他にも浦島虎徹、日向政宗も天草四郎を演じることが出来ると鶴丸は言い出し、一揆の為の民衆を集めていきます。
浦島虎徹は鶴丸の言う通り無邪気に仲間を集め、日向政宗は山田右衛門に祭り上げられ民衆の光として仲間を集めていきます。
合言葉は「パライソ」、民衆は口々にパライソと言いながら一揆に参加していき、集まった三万七千人の民衆の中心には鶴丸国永がおり、歴史通り大名を討ち取ります。
徐々に民衆を集める意味に気付き始めた他の刀剣男士達は鶴丸国永に詰め寄りますが、これは任務だ、歴史を守るために必要ならば人殺しもすると突き放します。
豊前江と松井江に幕府軍への潜入してほしいと告げる鶴丸国永、そんな鶴丸国永へ「なぜ憎まれ役を演じる」と問う大倶利伽羅、民衆達との仲を深める浦島虎徹と、それに付き添う日向政宗。
降伏しようと言う山田右衛門作に対し「だったら何でこんな戦始めた!」と鶴丸国永は憤慨し、戦を選んだ時点で、単純な暴力を選んだ時点で間違いなんだ。と山田右衛門作を牢に入れてしまいます。
そしてついに歴史通りに一揆軍は原城で籠城戦を行いますが、兵糧攻めにあった一揆軍は徐々に衰え、幕府軍による撫で切り(皆殺し)が始まり三万七千人の尊い命が奪われ島原の乱は終結します。
実際の歴史をミュージカルに落とし込んだ物語
物語の中では、幕府軍の武士も徳川家康が築いた江戸の世で平和に生きていた人物だと思わされる描写がいくつかあります。
武士たちは父親から大坂の陣、関ヶ原の戦いの話を聞いている、と話しますが、本人たちは初陣であり人を斬ったことが無い、自分に人が斬れるだろうか、と話し、長い期間戦が起こっていないことを表します。
一揆勢の中にいる兄弟と鶴丸国永との会話に「石をいっぱい投げた」「おかしかおっちゃんに石をぶつけた」「両手に刀を持ったおかしなおっちゃん」と出てきます。おそらくこれは宮本武蔵の事をさしているのではないかと思われます。
残されている宮本武蔵の書状の中に、敵の落とした石に当たって負傷した旨が記載されており、島原の乱にて民衆の投げた石に当たって負傷したとされています。
鶴丸国永、浦島虎徹、日向政宗の三振りが天草四郎を演じますが、複数の天草四郎が存在してもいいのだろうか。と疑問に思われるかもしれません。
実際の天草四郎はどのような人物だったのでしょうか?天草四郎に関する説は複数あり、十代半ばの少年である、白い着物を着て袴を履いていた、御幣を持っていた、豊臣秀吉の孫である、など、信ぴょう性はともかくとして様々な説があり、中には天草四郎という人物は存在しなかったのではないか、などという説まであります。
実際に幕府軍側は天草四郎の容姿を把握しておらず、同じ年頃と見られる少年の首が幕府軍側の陣に次々に持ち込まれていたと伝えられています。
それぞれの説を一人で演じるのではなく、複数で演じることによって補っていたのではないでしょうか。
それぞれの刀剣男士の魅力が詰まった2部
史実通りの悲惨な結末を迎えた1部とは一転し、それぞれのイメージカラーをあしらった個性豊かなオリジナルの衣装で登場する刀剣男士達。
刀ミュの2部衣装は公演ごとにオリジナル衣装がそれぞれ3種類あり、ライブが進むにつれ衣装が変化していく部分も非常に魅力的です。
審神者(ファンの総称)達の持つ色とりどりのペンライトの海の中、共通のデザインを持ち、ひらひらと揺れる袖や裾を靡かせながら6振りは新曲を歌いあげていきます。
1曲目が終わると一番上に纏っていた衣装を脱ぎ捨て、それぞれをイメージしたまるで王子様のような衣装でありながらもそれぞれの個性が現れている豪華な衣装に変わります。
MCを挟み次の曲へ。
松井江のイメージカラーであるターコイズブルーの色に変わったペンライトに照らされながら怪しげな魅力にあふれたソロ。
大倶利伽羅のヴァーミリオン、豊前江のルビーに染まりながら、大人の魅力あふれ色っぽさも感じるデュエット。
浦島虎徹のマリンブルー、日向虎徹のウメに照らされながら元気いっぱいにステージ上を駆け回りながら歌うデュエット。
鶴丸国永のパールホワイトに染まった会場の中、力強いながらもしっとりとした雰囲気も持つソロ。
再び6振り揃い、静かの海のパライソ代表曲ともいえる「Free Style」をさわやかに歌いあげます。
刀ミュ恒例!歴史人物キャストによる太鼓演奏
2部の後半ではトライアル公演から続いている刀ミュ恒例の歴史人物キャストによる太鼓演奏曲が存在します。今作では山田右衛門作、松平信綱、武士の2人が演奏する力強い太鼓の曲に合わせて刀剣男士達が登場し、着ている第2形態の衣装を脱ぎ捨て最終形態になります。
最終形態の衣装は露出度が上がってそれぞれのキャストの魅力を惹き立てており、コロナ禍の演目でなければ黄色い悲鳴が上がっていたでしょう。
また、太鼓曲では演奏している歴史人物キャストと刀剣男士キャストがにこやかに接していたりと、1部のミュージカルとはまた違った魅力が見られます。
2.5Dアワード2021大賞受賞
2022年1月に一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会が運営している公式メールマガジンの会員・2.5フレンズを対象とした「2.5D アワード」が開催され、3月の結果発表にてミュージカル『刀剣乱舞』~静かの海のパライソ~が大賞を受賞しました。
加えて俳優部門で鶴丸国永役の岡宮来夢、演出家部門で刀ミュの演出を担当している茅野イサム、脚本家部門で刀ミュの脚本を担当している伊藤栄之進が受賞し、静かの海のパライソの人気ぶりを象徴した結果となりました。
最後に
静かの海のパライソは、史実通りとはいえ悲しい結末を迎えます。しかしその物語の中には歴史の中に名を残さない人々の命、歴史に名を残した者の苦悩、刀剣男士の使命が刻まれており、非常に奥行きのある作品になっていると思います。
刀ミュの物語はまだまだ続いていますので、これからも素敵な作品が生まれ続けていくことを楽しみにしています。